わたしのしあわせ強化月間

連載『素敵人間計画』 くろかわじゅん

わたしのしあわせ強化月間

いま、私の頭の中は
しあわせでいっぱいです。

3年ぶりに
Mr.Childrenのツアーが始まったから。


4月末から、5月末の今も
絶賛Mr.Children強化月間(勝手に名付けました)のため、
コラムを書いている時間すらもないぐらいに
頭の中はMr.Childrenでいっぱい溢れています。


だから、ここに書きたい
モヤモヤした思いや悩み事もありません。

最近気がつきました。
しあわせな時は、
誰かに何かを伝えたいと思わない性格だと。
案外能天気にケラケラ毎日生きていけるものだと。


でもせっかくなので
Mr.Childrenがつくってくれた素敵な出会いについて少し書こうと思います。

よかったらお付き合いください。



2019年5月2日 札幌ドーム
私が最後に行ったMr.Childrenのライブです。

その年の冬、コロナによって世の中は
ガラッと変わりました。
一瞬の変化だったからこそ、
コロナ前の日常を思い出せないほどに、
孤独な暮らしが当たり前になってしまいました。

コロナ禍も
Mr.Childrenは新しいアルバムを出したり、
ラジオを配信したりと様々な活動をしてくれていました。
でも、それには興味を持てないぐらいに
仕事で頭はいっぱいで、
誰にも会えない毎日に心は弱っていました。


だけど
2022年4月23日 福岡
大きなドームでの再会。
Mr.Childrenの再開。
そんな"さいかい"をお祝いするように
今年はデビュー30周年のアニバーサリー。

会場に入って、
暗転し、オープニングが流れた瞬間、
びっくりしてしまうぐらい
涙がわーっと流れました。

桜井さん(ボーカルね!)の声を聞いて
さらに涙が溢れてきました。

3年間が、嘘みたいに、
心が解けていくみたいにスーッと
帰ってきたみたいな穏やかな気持ちです。


わたしにとって
Mr.Childrenは人生そのもので、
241曲、全ての曲に
人生のその時々の思い出が宿っています。


でも、わたしだけじゃなく、
ファンのみんなの人生が241曲に
それぞれ乗っかっていて、
そんな何万人の人生が彩りになって、
ライブで聞く曲はどれも特別に聞こえます。




「生まれてきて良かった」

そう思うことは、
日常を生きていて一度もありません。

でも、ミスチルのライブに行くと、

「生まれてきてよかった
また会える時まで生きていきたい!」

そうやって、簡単で傲慢に
生きていることへの執着や希望が生まれます。


そしてそれは、
他のファンのみんなも
同じ気持ちなんだろうと感じます。
だからなおさら、
独りじゃないと思えて安心します。





そんな私がMr.Childrenに出会ったのは
ドラマ オレンジデイズが
放送されていた2004年。
主題歌を歌っていたのがMr.Childrenでした。


2013年
ふと友達に誘われて行ったライブは
その、Mr.Childrenでした。

恋に堕ちるみたいに
瞬間的でいて衝撃的に好きになりました。
そして好きなものが出来た自分を
ちょっとだけ好きになれました。笑


母が亡くなった年、
ライブでたまたま出会った男性がいました。
後から知りましたが
その方のご両親も自死をされていました。

18歳に出会ってから
男女の関係に一度もなることなく
ずっと人間らしくいられて心を許せる
唯一の男性のお友達も、
ミスチルを通して出会いました。

今でもご飯に行く仲の
高校の時の担任の先生も、
卒業式の翌日に一緒に
ミスチルのライブに行ったからこそ、
今も繋がっていると思います。


他にもいろんな方に、
Mr.Childrenを通して出会ってきました。



そして中でも
わたしには忘れられないライブがあります。

それは母が亡くなった年
四十九日が終わった後に行ったライブ。

そのライブのMCで、桜井さんは
愛とは何か…仏教のブッダの、
愛にまつわる話をしてくれました。

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生まれたばかりの我が子が
死んでしまい、母親はそれをどうしても受け入れることができない。

母親はいつまでも我が子を抱いたまま
ブッダのもとを訪ねて、懇願します。
 
「ブッダ様、
この子をどうか生き返らせてください」
 
するとブッダはこう答えます。
 
「わかりました。では 街へ行って
ケシの実をもらってきてください。
ただし そのケシの実は
親も子ども兄弟も
誰一人死人が出ていない家から
もらってきてください」

 
母親は一目散に街へ向かい
ケシの実を探しました。
 

しかし、ある家を訪ねても、
次の家を訪ねても、みんな、
おばあちゃんが亡くなっていたり、愛犬が亡くなっていたりしました。
ブッダに言われた、
死人の出ていない家など一軒もなく、
母親は散々走り回り
疲れ果ててしまいます。
 
そして 
その疲れ果てた体ながらに
悟ったのです。

「いずれ人は死んでしまうものなんだと。
私の子だけじゃなく、みんな同じなんだと。」


そのことに気づいた母親は
ブッダにそれを話します。
 
するとブッダは

「生きている子は生きているまま愛せばいい
 死んでしまった子は死んだまま愛せばいい」

こう母親に言い聞かせたのでした。




僕はこの作品を初めて読んだとき
胸に突き刺さるような
衝撃を受けました。

僕は政治家でも宗教家でもないですが
ブッダを読んで

愛とは

「想像力」

なんじゃないかと思いました。

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このライブの

このブッダの

いや、桜井さんの言葉は、

わたしにとって生涯忘れることのできない
とても心に残っている言葉です。
母の死との決着をつける
大事な大事なきっかけです。


母が亡くなった年に
このライブがあったこと
この話をしてくれたこと
同じような境遇の人に出会えたこと

全て運命のような気がしました。
まるでわたしのための言葉のような気がしました。


あれから何年も経った今、
その時の出来事があったから、

人生はちゃんと
必要なときに必要な人と
出会えるようになっているんだなと思えます。

今はもう連絡が取れなくなってしまった人、
今も仲良くしてる人、様々ですが、

ちゃんと
出会うべき時に出会うべき人や、物に
出会えるようになっているんだろう
と信じています。


年々、昔のように
熱いエネルギーではなく、
穏やかに、何層にも好きを重ねるように
Mr.Childrenをきいています。

たくさんの好きが重なって
出会ったばかりよりも好きが大きくなっています。

きっと愛はこういうことなのだろう…と
そして
人生とはうまくできているもので
だから身を任せていればいいのだと

生きていく上で
大事なことに気づかせてくれた
Mr.Childrenに

最大級の感謝と
永遠の愛を込めて今回は終わりとします。


好きなことがある毎日、
そしてわたしが
今すごいしあわせなんだよねと言える毎日、
こんな日々が来るなんて
想像もしてなかったから…

人生は
ふとした瞬間に変わるものだと思います。


そして、
これまでもさまざまな気持ちに
決着をつけてもらったライブだったけど、
今回はコロナ禍の孤独と、
ついでに勢いでずっとモヤモヤしていた関係にも決着をつけました。
ふう〜スッキリした〜。軽い〜。


強化月間が終わってしまっている
次のコラムでも
しあわせだな〜と言えていたらいいな。

きっと大丈夫な気がする。
いまは……

執筆者

くろかわじゅん Jun Kurokawa


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